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2021年1月7日木曜日

『三つ編み』レティシア・コロンバニ~運命を編む女たち

 『三つ編み』レティシア・コロンバニ著
ベストセラーになっているのでなにげなく手にしたら、今読むべき本すぎてびっくり。3人の遠い国、年齢、生き方の女性たちの壮絶な生きざまが描かれている。決して交わることのない人生が、タイトルのように細い細い髪のような縁で、編まれている。「社会の居場所」を求め「社会で役に立っているのか」と息苦しくなった時にぜひ読んでほしい。私にとっては産後うつになった時、乳がんが告知された時…出合えてよかった。

【登場人物】
1人目スミタ
:インドのカースト制度の外(最下位よりもひどい状況)の不可触民。排せつ物の清掃(素手での肥溜め汲み)を生業としている。給料としてもらえるのは残飯…こんな職業を娘には継がせないと小学校に通わせるように奮闘。

2人目ジュリア:イタリアのシチリアで毛髪加工業を営む家族の3人姉妹二女であるジュリアは家業に誇りを持ち、仕事を愛し、父の仕事を継ぐ。そんなジュリアが初めて恋に落ちた矢先、父が事故で倒れ家業の経営危機を知る。

3人目サラ:カナダで敏腕弁護士として働くサラ。ガラスの天井を打ち破るためにシングルで育てる3人の子どもの存在すら職場でひた隠しにしている。有名な法律事務所にて女性として初めて羨望されるポストにつこうというタイミングで乳がんを告知される。


全く縁遠い人生が編まれていく様が繊細かつダイナミック!作者レティシア・コロンバニは映画監督でもあるというのが納得。想像だにし得ない…というか、恥ずかしながら存在すら知らなかった不可触民スミタの生き様が映像のように浮かび上がってくる。


縁遠い話のようだけれど、子育て中の人、仕事に迷いを感じている人、闘病中の人いろんな立場の人に読んでほしい。

下記↓は敏腕弁護士サラの章なんだけれど、日本の母となんら変わりない思い。
「夫の軽さを羨んだ。不思議なことに、こんな感情とは無縁に見える男たちのあの驚くべき身軽さはどうだろう。憎らしいほど気楽に家を出ていく。毎朝、彼らが書類だけ持って家を出るのにひきかえ、彼女にはどこへ行くにも罪悪感が亀の甲羅のようについてまわる。」

不可触民スミタは持って生まれた運命として抗わずに生きる夫や親兄弟とは一線を画し、無謀とも言われる計画=娘を小学校に通わせるを立てるが…
「(肥溜めのようの)籠を持って、娘を一緒に連れて行くほうがどんなにたやすいか……。」

スミタの出会った不可触民ではないインド女性の話から
「ここでは、この国では、強姦は被害者の罪になる。女に敬意は払われず、これが不可触民ならなおさらのこと。触れても見てもいけないはずの者を、恥ずかしげもなく強姦する。」

「この国では、毎年二百万人の女性が殺される。二百万人の女たちが男の蛮行の犠牲となり、世間の無関心のなかで死んでいく。全世界は気にもかけない。世界から見捨てられている。」

「スミタは来世まで待つ気など毛頭なく、大事なのはいまのこの人生、自分とラリータ(娘)の人生だ。」

乳がんを告知され、妊娠と同じく(!)職場で病を隠し通そうとするも、すぐに知れ渡り、職場と闘い、ついには自分を取り戻していくサラ。自身の体験はもちろんなんだけれど、周囲の人の病気とどう向き合うかを改めて考えさせられる。

「犠牲者、被害者、悼まれているのは自分なのだ。」

「病気、それは妊娠よりたちが悪い。妊娠なら期限がある。癌はひねくれていて再発しうる。頭上に吊るされたダモクレスの剣、どこにでもついてまわる黒雲のようなもの。」

「どんな罪に問われているというの?!  あやまちを犯したとでもいうの?  何について自分を正当化しなければならないというの?」

「彼女を支えていた唯一のもの、毎朝起きあがる力をあたえてくれたものを奪われたーーー社会的自我、仕事、この世界に存在し、居場所があるという実感。」

「病気で法律事務所を混乱させるのをおそれていたが、もっと残酷な真実にぶつかるーー彼女がいなくても順調に機能している。」

「快復へ向けた闘いでは、自分を尊重することを怠ってはいけない、と言っていた。鏡にうつる自分の姿は敵ではなく、味方でなくてはならない」

「失っていたものを、髪がいま取りもどしてくれたかのよう。力、尊厳、意欲、サラを本来の誇り高いサラたらしめるものすべて、そして美しさも」

【Amazonより】

この怒りと祈りが私たちをつなぐ。
理不尽な人生と闘う3人の女性。
遠く離れた彼女たちを支えたのは、髪のきずなだった。

3つの大陸、3人の女性、3通りの人生。唯一重なるのは、自分の意志を貫く勇気。

インド。不可触民のスミタは、娘を学校に通わせ、悲惨な生活から
抜け出せるよう力を尽くしたが、願いは断ち切られる。

イタリア。家族経営の毛髪加工会社で働くジュリアは父の事故を機に、
倒産寸前の会社をまかされる。お金持ちとの望まぬ結婚が解決策だと母は言うが……。

カナダ。ひとりで子育てをする弁護士のサラは、女性初のトップの座を目前にして、
癌の告知を受ける。それを知った同僚たちの態度は様変わりし……。

3人が運命と闘うことを選んだとき、
美しい髪をたどって、つながるはずのない物語が交差する。


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【おうちでバランスボール】現在お休み中、1月中旬頃から再開予定。

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