東京大学入学式の上野千鶴子さんの祝辞で紹介されていた著書『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ著。モデルとなった事件当時、被害者である女性が叩かれているのを見て、目を覆っていました。決して目を背けるべきではないのですが、まだまだ幼い4女児を育てている真っ最中の私には気が重すぎました。事件から3年経ってこの機会に読んでみたら、一気読みでした。
「東大生に対するイメージを悪くしている」という論争が沸き起こった小説ですが、東大生のイメージはわきに置いて（私は決して東大のイメージ低下は感じ取りませんでしたが）加害者たちが「ふざけていただけ」と称する性暴行がどれだけ女性の、人間の尊厳を破壊していくのか…読んでほしい。私は一気読みしました。後味悪いけれど（！）ひきずるべき後味。
上野千鶴子さん（東大入学式祝辞内の本書についての部分）
東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱した事件がありました。加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかがわかります。
内容（「BOOK」データベースより）
横浜市郊外のごくふつうの家庭で育ち女子大に進学した神立美咲。渋谷区広尾の申し分のない環境で育ち、東京大学理科1類に進学した竹内つばさ。ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。渦巻く人々の妬み、劣等感、格差意識。そして事件は起こった…。これは彼女と彼らの、そして私たちの物語である。
小説発表当時、東大でトークセッションが行われ「東大生のイメージとかけはなれている」とか「あんな東大生ばかりではない」「女性蔑視している男性ばかりではない」などなどいろんな反応が起きているのですが、これは作者に怒り向けてる場合じゃないでしょ。怒りを向けるべきは事件を起こした加害者！！
正直、我が子どもと言ってもいい年齢で事件を起こした加害者たちの将来も一瞬思いをはせてしまう自分もいました。でも年齢に関係なく許されざる行為。それ以上に被害者の傷つけられた将来、もっと深く傷つけられた魂を思うと…後味の悪さの最大要因です。
東大生のイメージよりも何よりも性交まで至っていない加害者たちの言うところの「ふざけた」行為、なぜ彼女は逃げなかったのか？逃げられないのは本当によくわかっているつもりだし、声も出せなくなるのもわかっているし、ついていきたくないのにその場のノリ＆流れで男性宅に行ってしまうこともわかる。けれど、小説、フィクションという形態をとって彼女の生い立ちに想像をめぐらす…被害者と遠い立場にいる人ほど、本当は読んでほしい。
フィクションではあるものの加害者たち親のとった行動などなど、もやもや。ジェンダー、性暴力はもちろん親子関係、学歴社会のことなど…考えさせられる必読書。
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